【ケーブルレポート】SXC8

以前から欲しいと思っていたケーブルですが、先月末に一万円代後半で新品在庫を見つけてしまったため購入しました。中華イヤホン以外ではマイナーなイメージのある2Pinですが、さすがにコイツのはんだ付けはやりたくないので換装は考えていません笑。
既に山と情報が落ちているケーブルですが、今回手元のRE2000と比較試聴をしたため取り回し面含めて所感をまとめておきます。

取り回し面

太さ、重さ、固さとどれを取っても規格外です。これよりデカ太のイヤホンケーブルとなると、ロシアのアレしか思いつかないレベル。とにかく扱い難さの部分は世間で言われ尽くされているため、今更私が言うことは多くありません。
あえて個人的印象を言うなら、タッチノイズは過去私が所持していた中で最も酷かった「Nobunaga labs 景光」を超えており、さらにその景光より数段太いです。


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右はLitz wireで、その他は手持ちの中で太いケーブルを集めました。大きい部類のケーブルと比較すると、SXC8のデカさが一層際立ちます。

固さについては確かに異常なものの世間で言われてるほど絶望的って訳でもなく、ちょっと大きめのケースがあれば収納は問題にはなりません。まぁそれでも耳掛け部分はどうしようもないので、ワイヤーを無理やり曲げて調整するしか無さそうです。
私の価値観としてデカかろうが太かろうが音が良ければ問題はないのですが、タッチノイズが極力発生しない環境でしか使えないということは歩行中使用はNG、各種乗り物の中も困難と、遮音性底辺のRE2000と使える場所が被っています。それもあってRE2000用に購入したのですが、、。

音質面

今回は使用中のオーグライン8芯とどちらが良いのか比較する形になりましたが、それぞれの音質傾向について比較してより明確にしたかったので、DAPの方はM11Pro固定で4パターン試しました。

パターン①RE2000 + オーグライン+α,+pt 8芯 + A5
パターン②RE2000 + SXC8 + A5
パターン③RE2000 + オーグライン+α,+pt 8芯 + Mojo
パターン④RE2000 + SXC8 + Mojo


結果から先に言うと、数時間の激戦の末、SXC8はオーグライン8芯に敗れました。

音質レベル、好みを総合的に評価すると③→②→①→④の順に良かったです。このうち①と④は明確に相性が良くなく早々に除外。最後は②と③のどちらが良いのかで聴き比べとなりました。

③RE2000 + オーグライン+α,+pt 8芯 + Mojo

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音質は手持ち機種の中で最も「完璧」に近い

③は実は2年近く使っている構成で、オーグラインの+pt4本をLRそれぞれのプラス極に、+α4本をマイナス極に繋いで自作したケーブルを使っています。同じものをオヤイデに製作依頼すると6万弱かかりますが、自作できるなら材料費3万4千円程度で済みます。(編み込みが下手だと丸めたときぐちゃぐちゃになりますが)最大の特徴は隙のない帯域バランスと唯一無二の音場で、全音域がほぼフラットに聴こえ、特定の音が不自然に強調されたり響いたりしません。音場も異様なまでに広く、聴こえる範囲どうこうと言うよりも遠くからブワッと拡散して上下に抜けていくような独特な広がり方をします。この感覚はイヤホンと言うよりも開放型ヘッドホンに近いです。音色的にもオーグラインと相性が噛み合っているようで、RE2000のウォームで艶かかった音がオーグライン+Ptによってさらに抜け良く繊細さを増した音になっています。
こういうタイプなので特に音源相性も無く、何を聴いても気持ちいいです。音圧がさほど強くないせいか聞き疲れもしませんし、個性の強さと万能さを両立しています。
強いて言えば高音がやや刺さり気味ですが、これはシンバルなどの音を引き立てる効果も出していますし気になる程ではありません。
チューニングにこれと言った穴が無く、唯一無二の音に仕上がってもいるので、率直に遮音性以外の欠点を見つけるのが難しい構成です。これを超えるのは生半可な出費じゃ厳しいんじゃないかと思いつつも、逆にSXC8の音質全振りっぷりにそれだけ期待していました。

②RE2000 + SXC8 + A5

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中々良かったものの、高音域が見劣りした

②は今回購入したSXC8にFiioのアナログアンプA5を組み合わせた構成です。最大の特徴は中低音域の生生しさです。素の解像度高さと空間表現力にSXC8の濃密な中低域が加わり、臨場感溢れる音になりました。さらに人の声の位置がオーグラインより近くなり、これだけの濃密な情報量を破綻無く鳴らし切るRE2000のポテンシャルにも改めて驚かされました。帯域バランス的にはダイナミック型らしいピラミッド型で、音色的にはウォームが少しタイト目に寄った感じです。低音の量感も増え迫力がかなり増しました。ただ、言ってしまえば「他のイヤホンでも似た傾向が実現出来てしまいそうな音」でもありました。中低音域の質で言えばDITA Brassをイメージしてしまいましたし、音圧が強くなり出音の位置が近くなった分拡散するような音場感は消えました。
私に言わせれば、RE2000の唯一無二性は何と言っても音場感です。他にも優れた部分は幾らでもあるのですが、それらの長所は唯一無二ではありません。他のイヤホンでは考えられないような縦横に広がりまくる圧倒的な鳴り方こそが、20万の価値と言っても過言ではありません。
この部分が潰れるようではそれはRE2000ではない!と思いながら聴いていたところさらなる粗が.....
中低音域に圧倒されて聴き逃していたのですが、高音域のハイハットやシンセの音が部分的にマスクされ聴き取りにくくなっています。特にこれらの音が多い楽曲を聴いていると分かりやすいですが、ナオト・インティライミの「ありったけのLove Song」でこれに気づき、続いてfhanaの「ホシノカケラ」を聴きながらコイツは無理だと思い至りました。音場感どころか高音域の解像度まで下がってしまってはさすがに聴いていられません。
誤解を恐れずに言うと、RE2000の高音域や女性ボーカルは結構ハスキーで刺さりやすいのですが、SXC8はちょっとその刺さりの程度も許容圏外でした。特にmojoと合わせた④の組み合わせで刺さりが酷く、A5に変えたところ刺さりは減ったものの情報量が潰れるのは避けられなかった、という感じです。

情報量+音場がSXC8の特徴としてよく挙げられていますが、この構成の場合は低音寄りで音圧の強いSXC8がこちらも僅かながら低音域寄りかつ繊細な音のRE2000と上手く噛み合わず、合わせた結果中音域以上の情報量が潰れぎみになってしまいました。対してオーグライン+ptは銀、金、プラチナの合金で割合的にはほぼ銀ですので、ベースの性質は銀で比較的音色が明るくなり高音域が綺麗に出る特徴があります。+αも使って音場感も補っているため、結果的にRE2000の特徴を活かす事ができています。単体ではどちらも高い実力を持ったケーブルですが、このあたりが相性差になったという印象です。


余談ですが、ここ最近幾つかケーブル試聴をしていて、「ダイナミック型ならば〇〇線が良い」とは一概に言えないと思わされました。今使っている主なダイナミック型の中で相性が良いと感じたのは

LYRAⅡ→銀線もしくは銀銅ハイブリッド
VEGA→銅線ないし銀メッキ銅線
RE2000→銀線

という感じです。これもケーブル独特の音響特性は無視したざっくりとした傾向ですので、実際に聴いてみるまではわからないという認識のほうが正しいかも知れません。

総括

ほぼRE2000用に購入したSXC8ですが、今回は相性の問題から採用とはなりませんでした。
箱出し一発目は中域主体で低音はボヤけてレンジも狭く取り柄が一つもない音でしたが、20時間ほどの鳴らし込みで劇的に変わりました。特に低域の分離感と音場が向上したので、箱出しを聴いて諦めてしまうのは勿体ないケーブルです。
音質レベルとしての実力は疑いようがないのですが、正直このケーブルは取り回しのみならず音質相性的にも扱いが難しそうです。何せ音圧強い、情報量多い、低音寄り、音場は広め、と単体でかなりキャラを出してしまうので、イヤホン本体と合わせたときどのような音質傾向になるのかがほぼ予測不能です。
ネット評でBA型との相性を推す声が多いのですが、恐らくは音圧の強さと低音寄りのチューニングでBA型との相性補完をしている方が多いのかと思います。ダイナミック型のモデルとも全く合わないことは無いでしょうが、とにかくアテの付けようがない。聴いてみるしかない。そんなケーブルです。

この手の実機試聴情報や意見というのはネット上にあって有りすぎるという事はないと思います。大多数の人の感性では凡そ立ち入らない世界だからこそ、もっともっと情報共有し合って有意義なオーディオライフを送りたいですね。