2021年 9月ハイエンドイヤホン試聴レポート

先日、店舗移転後初めてeイヤ秋葉店に行き主に2019〜2021年発売のハイエンド帯イヤホンの試聴をしましたので、その際の評を詳しくまとめます。
コメントについては試聴現場でメモしたものをそのまま載せています。点数については音場、解像度、装着感を6点満点で評価し、音場+解像度+好み評点で音質総合点をそれぞれ付けました。
なお、2曲合わせてそれぞれのイヤホンを9分程度しか試聴していないので、もう1回聴いたら印象が変わる等はあると思います。特に後半はかなりズレた評価かもしれませんので、参考程度に見てください。

試聴環境

極力評価基準を統一するため、試聴環境、音源については全て同じものを使いました。

試聴環境 : M11pro + SXC8mini mini + A5
ケーブル : 全て純正
試聴音源 : ナオト・インティライミ『ありったけのLove Song』、Sia『Alive』


※追記
後程、A5のBASSフィルターをONにしたまま試聴していた事が判明しました。
低音過多の状態で試聴してしまったため、特にダイナミック型の機種の評価が低めになってしまっています。帯域バランスについては素のチューニングより低音寄りになっているものとお考え下さい。

評価レポート


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今回試聴した機種一覧

Technics eah-tz700

帯域バランス : ややローよりのドンシャリ
音場 : 4
装着感 : 5
解像度 : 3.7
音色傾向 : 少しシャープ寄り
向いてそうな音源 : ロック EDM
コメント : 低音の深さは十分だけど高音もかなり綺麗に出る。一番凄いと感じたのは中低音域の生生しさ。どちらかと言うと低音寄りでダイナミック型らしいサウンドバランスにはなってる。情報量はかなり多く純正ケーブルの時点で13万の元取ってるのでは?と思えるクオリティ。音場も広めで相当楽しい。

素点7.7 好み評点4 計11.7点

Campfire Audio ARA

帯域バランス : ハイ強めの逆ピラミッド
音場 : 4
装着感 : 3
解像度 : 5
音色傾向 : シャープ
向いてそうな音源 : 低音多めの音源以外
コメント : メダよりハウジングが数段デカくなった。高音の鳴り方がA8000に似てる。解像度はメダと比較して激増していて、音場も広くなった。メダより劣化しているというレビューには共感できないが、低音も含めた全体のバランスはメダの方が良かった気がする。ボーカルが最前線には出てこないので、メダより聴きやすいのは多分こっち。

素点9 好み評点2 計11点

Campfire Audio Dorado2020

帯域バランス : ハイ多めのピラミッド
音場 : 3
装着感 : 4
解像度 : 3
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 洋ロック ライブ系
コメント : でかい割に耳への収まりはそれなりに良い。ドライバが同材質だけあってベースの音質は初代VEGAを思わせるものがあり、一言で言えばVEGAの音場を削って高音の繊細さを足した感じ。低音が結構深く重低音までしっかり出るが、高音もBAのせいか繊細さがある。が....全体の繋がりが不自然で、ドンシャリを志向したけどドンシャリになりきれてない低音ホンというような何とも言えない印象を受けた。合う音源はVEGAと大体同じ。

素点6 好み評点1 計7点

Campfire Audio VEGA2020

帯域バランス : 釣り鐘型
音場 : 3
装着感 : 4
解像度 : 3
音色傾向 : 若干シャープ
向いてそうな音源 : VEGAよりは色々聴けそうだが、大枠同じ
コメント : エージング不足なのかボワ付きがある。VEGAの音場は気持ち薄れた。中低音全体のアタック感が増していて、ATLASの後継的な音という意見にものすごく納得した。が、ATLASよりは聴きやすいバランスになっている。高音はVEGAとさほど変わっていないが分離感が増した気がする。高音はVEGAに勝るがVEGA最大の個性である空気感は薄れてしまった。リケで補完しようにも中域が濃すぎて改善は難しいのではないか?と思う。DORADO2020よりはこちらの方が聴きやすい。

素点6 好み評点2 計8点

Moondrop Illumination 光


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帯域バランス : フラット
音場 : 3.7
装着感 : 5
解像度 : 4
音色傾向 : クール寄り
向いてそうな音源 : JPop アニソン
コメント : 感度高め。帯域バランスはRE2000と似ている。が、RE2000よりは低音に癖が無く、高音の刺さりも殆ど無い。高音が特に綺麗で、電子楽器の分離感がかなり良い。バランスも情報量も全帯域隙が無く、10万以下なのが信じられない音。イヤピのせいでうまくフィットせず高音寄りに聴こえてしまったが、低音は多分イヤピで補強可能なのでフラットだと思う。ハウジングの収まりはとても良いので装着感もおそらく良い。

素点7.7 好み評点4.5 計12.2点

Noble Audio KHAN

帯域バランス : ハイよりのフラット
音場 : 4.4
装着感 : 4
解像度 : 5
音色傾向 : 硬質でカチっと鳴る レアな音色
向いてそうな音源 : 洋楽 ロック
コメント : トリプルハイブリッドだけどBA型の特徴が濃く出た音に感じる。情報量はデタラメに多いのだが、厳密に言うと音を細かく分解するより輪郭をはっきりさせるタイプだと思う。低音も必要十分には出ている。ローとピエゾの音がミックスして独特の音響感が生まれている。これは唯一無二の鳴り方、広がり方だと感じた。結構欲しい。

素点9.4 好み評点4 計13.4点

SENNHEISER IE900

帯域バランス : フラット
音場 : 4
装着感 : 2
解像度 : 4
音色傾向 : 若干シャープ
向いてそうな音源 : 洋楽 ライブ系
コメント : 結構鳴りにくい。最近の発売機同様耳掛け方式になったものの、肝心の装着感は800からそれほど改善していない。一体感と高音の綺麗さがとにかく際立つ。情報量が800と比較して激増していて、高音の分離感が凄まじい。低音も必要十分で音場も良い。情報量が多いのに取り繕ってる感が皆無なのが超絶好印象。RE2000やA8000に連なるダイナミック型の最終進化系の1つではないか?ハウジングの形状と装着感さえ良ければ.....。

素点9 好み評点3 計12点

F Audio Dark Sky

帯域バランス : フラット
音場 : 3
装着感 : 4
解像度 : 4.4
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 割と何でも
コメント : 比較的癖のないフラット。自然さという意味ではピカイチ。高音の分離感がかなり良く細かい音までキッチリ前に出てくる。低音はダイナミック型らしい沈み方をする。純正LYRAⅡ程ビシビシ沈まないけど、傾向としてはLYRAⅡの低音と似たものを感じる。優等生すぎてコメントする事が無い。人によっては一点物購入して沼が完結するイヤホンかもしれない。

素点7.4 好み評点3 計10.4点

JHAudio✕Astell&Kern Layla Aion

帯域バランス : フラット
音場 : 4.3
装着感 : 4
解像度 : 3.4
音色傾向 : ややウォーム
向いてそうな音源 : 何でも行けそう
コメント : 片側BA12基という超弩級構成からはやや拍子抜けする音。べらぼうに解像度が高いわけでもないしキレッキレの高音が出るわけでもない。が、アナログ感と自然さに振っているかのような音色になっていて他のマルチBAとは別の味わいがある。全音域の情報量が多いが、靄のかかったような出音のため解像度はさほど高く感じない。音場は広めで音像もかなり濃いタイプ。音源を選ぶ感じが全く無いので、1点物と言うか1つあればそれで完結してしまうイヤホンと感じた。

素点7.7 好み評点4 計11.7点

newspring NSE1000-B

帯域バランス : ピラミッド
音場 : 3
装着感 : 3
解像度 : 3
音色傾向 : ウォーム
向いてそうな音源 : ロック
コメント : 一聴して低音過多とわかるサウンド。高音はよく響くのだがなお低音が多い。音色は真鍮らしいが同じ真鍮でも情報量はRE2000の圧勝、音場もRE2000の圧勝、とちょっとこの価格帯で特徴を見出すのは難しい音。低音の量感の割に低域にボワ付きが少ないのは良いのだが、率直に15万の価値は無いと言わざるを得ない。低音ホン✕真鍮らしい響き という属性に刺さるユーザーには良いかも。

素点6 好み評点2 計8点

Acoustune HS1697ti

帯域バランス やや低音寄りのフラット
音場 : 3.4
装着感 : 4
解像度 : 4
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 何でも及第点は取るが、ホップが最も良い
コメント : パッと聴いてわかる綺麗系。一体感と全音域隙の無い情報量を兼ね備えた万能サウンド。高音の電子楽器も綺麗に分離され、曲の旨味を逃していない感じがとても良い。一方で綺麗系らしく音場感は薄めになっている。FW10000とユーザー層が被りそうな印象を受けた。FW10000ほど「生」な感じはないものの、これも一点物として成立しそうな音だと感じる。価格を考えると唯一無二の選択肢になりうる。

素点7.4 好み評点 4 計11.4点

AAW Mockingbird

帯域バランス : 釣り鐘型
音場 : 3.4
装着感 : 6
解像度 : 4
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 洋ロック ライブ系
コメント : 中低音域が重い釣り鐘型サウンド。こもり気味でいまいち抜けの悪い音だけど、情報量はしっかり出ており高音の分離感はそれなりに良い。Layla Aionで感じたようなアナログ感を感じる。Aionより分離感は良いが、音のバランスは悪いといったところ。低音が深めの曲では独特の重々しく広がる空間表現が感じられ、洋ロックやライブ系の音源で真価を発揮するという印象。

素点7.4 好み評価3 計10.4点

AAW Canary

帯域バランス : 弱ピラミッド
音場 : 3.7
装着感 : 5
解像度 : 5
音色傾向 : ややウォーム
向いてそうな音源 : 割と何でも
コメント : 艶がかった弦楽器の音が響いてくる。楽器の響きはあるものの押し出しはそれなりで、ボーカルも適度に距離があり非常に聴きやすい。解像度分離感共に最高レベルだが、ハイブリッドらしく変に靄かかった部分はある。音抜けも良く、ゆったりした空間が作られている。これでクリアさがあれば完璧だった。

素点 8.7 好み評点4.5 計13.3点

総評

私はダイナミック型の滑らな音や空気感が好みで主に使っているのもRE2000、VEGA、LYRAⅡとほぼダイナミック型ですが、今回はこれまで毛嫌いしていたマルチBAやハイブリッドについても聴いてみました。全体としてキャラが個性豊かになり、かつて多くのメーカーがBAの搭載数を先を争って競い情報量追求型のサウンドを突き詰めていた時代とは全く違ったキャラの多ドラが増えたなという印象です。
特にCanaryの情報量と一体感を両立したサウンド、LaylaAionのマルチBAらしからぬ解像感、KHANの唯一無二の音場は印象的でした。

最近はとにかくハイエンドダイナミックのクオリティが高く、特にA8000、Dream等は一本持っているだけでイヤホンスパイラルを終わらせるような実力を持っていると思います。
しかし、2年程多ドラを聴かないうちにこれまでダイナミック型のアイデンティティだったはずの「一体感」という部分で多ドラがかなり追いついてきていたので、今回の試聴は多ドラの認識を改めるきっかけになりました。
情報量や中高音の分離感などは元々BA型、ツイーターの方がダイナミック型より有利ですので、一体感とそれらの長所を両立した機種が出てくると先述のA8000やDreamよりも良い選択肢になり得るな.....と考えさせられます。
今後多くのメーカーがピエゾ、静電型を取り入れていくとさらに音の多様性も増して面白くなりそうなので、期待したいですね。