ハイエンド1DDイヤホンレポート ① VEGA

タイトルの通り、今回はダイナミックドライバー1基を搭載したハイエンドイヤホンの中から特に優れた機種をピックアップし、10項目で評価を行ってみました。
レポートする基準は音質評価の高さを最重要視し、次いでメーカーの評価の高さ、話題性、音質の偏りなどを考慮しました。極力平等な評価とするため一部を除き純正ケーブルで評価し、実際に購入検討をする上で参考にできる様、音質のみならず実用性にも踏み込んだ比較を行いました。各機種ごとに稿を改めて記事にしますので、後程要望があれば追記や機種追加等したいと考えています。

1.試聴環境

まずは試聴機材から紹介します。試聴時には、以下の機種から最適と判断したものを用いました。

DAP

・Fiio M11Plus
・A&K SE180(SEM4)

アンプ

・Romi audio BX2Plus
・KAEI TAP-1
Cypher Labs AlgoRhythm Picollo

mini mini

SONY MUC-B20SB1 4.4 to 4.4
・uran AUDIO Ultimate AZURE 4.4 to 4.4
・ALO AUDIO SXC8 mini 3.5 to 3.5

評価に用いた機材


試聴音源は特定のもので聴いたわけではありませんが、全機種共通で聴いたアルバム/音源は以下の通りです
・Sia 『This is Acting』
・YOASOBI 『THE BOOK2』
椎名林檎ニュートンの林檎』(主に丸の内サディスティック)
・Chicago 『The heart of Chicago』
・dj-jo 『The Legend of Jo 2018』


2.評価基準

続いて各機の評価基準の説明です。以下の各項目を10点満点で評価し、機種ごとにレーダーチャートにまとめました。評価基準には音質評価の高さという観点だけでなく優劣で言えない部分の評価も含まれますので、点数が高ければ良いというものではなく、あくまで音質の傾向の参考程度に見て頂けると幸いです。

〈評価項目〉
①高音域・・・どれだけ高域が明瞭に聴こえるかを評価。情報量の多さ、分離感、表現の多彩さ等も評価に含まれる。全体の帯域バランスが悪くても、その音域が優れていれば高評価になる。
②中音域・・・高域と同様。
③低音域・・・高域と同様。
④解像度・・・イヤホンの基礎性能を語る上で外せない要素。各音域で音がどれだけ細かく分解されているかを全体として見て評価。情報量の多さも評価に含まれる。
⑤音場・・・音が鳴っていると感じる空間の広さを重要視し評価。空間表現力や立体感の有無も評価に含まれる。
⑥聴きやすさ・・・聴き疲れせず、長時間聴いていられる音かどうかを評価。装着感など、音以外の部分が理由で長時間聴けなくなったとしても低評価にはならない。
⑦スピード感・・・音の立ち上がりや抜けの速度を評価。音の出だしが速く明瞭に表現される程高評価で、残響が長く残ったりすると評価が下がる。「レスポンス」とほぼ同義と考えて頂いて問題ない。
⑧ジャンル相性・・・オールジャンル楽しく聴ける音なら高評価、特定のジャンルしか楽しく聴けないなら低評価になる。
⑨個性・・・「その機種でしか聴けない音かどうか」を評価。唯一無二な部分があればあるだけ高評価になる。
⑩実用性・・・ポータブルオーディオ機器として、どれだけ手軽に使えるかを評価。機器単位での評価なので、複数の環境で試聴したものについては全て同じ数値になる。要求パワーが高くアンプが必須だったり、良い音で聴ける環境が限られたり、使用する上での問題があったりすると低評価となる。逆に、プレイヤー1台で十分に楽しく使えるなら高評価となる。リケーブルは大減点とはならないが、純正との相性が良いならそれに越したことはないという思想で評価を行った。

※なるべく一面的な視点にならないよう考慮はしましたが、最終的な評価点は主観になりますのでご理解ください。

3.機種別レポート

それでは機器別レポートに移っていきます。2機種目以降の記事では見出し1~2の内容を省略し、これ以下の機器別レポートのみを行います。

① Campfire Audio VEGA
Campfire Audio VEGA

第1回目はCampfire AudioのVEGAをレポートします。VEGAは2016年発売で、CampfireAudioの1DDイヤホンとしてはLYRA、LYRAⅡに続く三機種目でした。同社の1DDイヤホンとしてはVEGAの後にもATLAS、Equinox、VEGA2020が発売されていますが、8.5㎜ADLCドライバーを搭載したモデルは唯一VEGAのみです。筆者の主観になりますが、立ち位置的にも、サウンド的にもVEGAはCampfireAudioのラインナップで外せない存在と考えています。VEGAについては、純正ケーブルのLitz wireが入手できなかったため、SXC8とあわせて評価を行いました。


上流構成はBX2Plus+M11Plusで、ミニミニにはキンバーケーブル製の物を使いました。

VEGA+SXC8+BX2Plus+M11Plus
VEGAの音質評価(10点満点)
VEGA+SXC8

感想など
VEGAは数あるオーディオ機器の中でも屈指の難物です。ケーブル、アンプ、イヤーピース等を相応なレベルと相性のものにした上で聴き方に気をつけなければ真の音を味わえない為、オーディオファンであっても、大半の方は見向きもしないでしょう。
しかし、この音は他のどこにも無い。地鳴りの如く遠鳴りする低域と迫力ある音像は唯一無二で、空間表現も他のハイエンドには無い異質なものです。Campfire Audioの1DD機としてはATLAS、Equinox、VEGA2020等の後継機が出ていますが、筆者は個性という意味では依然VEGAがナンバー1かと思います。
1DDから逸れますが、帯域バランスだけならVEGAはTyp512に似たタイプでしょう。 Typ512は一部で非常に高い評価を受けている印象ですが、筆者は「低域が強烈ながらも、他音域とキッチリ分離されて他音域の見通しを阻害しない」というのがTyp512が高評価される理由の1つにあると思っています。実はこれはVEGAの特徴でもあり、筆者がTyp512を初めて聴いたときに思い浮かんだのはVEGAの音でした。確かに低音がミソなのだけれど、月並みな「低音がすごいイヤホンの音」ではなく、低音以外もキチンと活かす。VEGAやTyp512の凄さはそこにあると思うのです。
純正で評価を行う前提なので踏み込むべきではないかもしれませんが、SXC8はさすがに同じ会社のケーブルだけあってVEGAとの相性は抜群に良いと感じます。元々優れていた音場がさらに拡張され、情報量も増し、純正で低域過多に感じた帯域バランスまでもが大きく改善しました。
総じて、一本あれば完結するタイプではなく、より汎用的な機種を持っている人が幅を求めて購入するような機種かと思います。追求欲が生まれてしまった方には、推したい音です。

*1:余談として、VEGAは発売時から低域の評価が図抜けて高かった印象ですが、発売から6年以上経過した2023年2月現在になって最新の発売機種と聴き比べてみても、低域の質は依然トップレベルと感じます。 筆者は、昨今のトレンドとして1DDイヤホンは中〜高域の表現力が煮詰められていく一方、低域が疎かになっていると感じているのですが、VEGAの低域の相対的な位置が6年間でほぼ変わっていないという事でこの傾向を一層確信させられました。

2021年 9月ハイエンドイヤホン試聴レポート

先日、店舗移転後初めてeイヤ秋葉店に行き主に2019〜2021年発売のハイエンド帯イヤホンの試聴をしましたので、その際の評を詳しくまとめます。
コメントについては試聴現場でメモしたものをそのまま載せています。点数については音場、解像度、装着感を6点満点で評価し、音場+解像度+好み評点で音質総合点をそれぞれ付けました。
なお、2曲合わせてそれぞれのイヤホンを9分程度しか試聴していないので、もう1回聴いたら印象が変わる等はあると思います。特に後半はかなりズレた評価かもしれませんので、参考程度に見てください。

試聴環境

極力評価基準を統一するため、試聴環境、音源については全て同じものを使いました。

試聴環境 : M11pro + SXC8mini mini + A5
ケーブル : 全て純正
試聴音源 : ナオト・インティライミ『ありったけのLove Song』、Sia『Alive』


※追記
後程、A5のBASSフィルターをONにしたまま試聴していた事が判明しました。
低音過多の状態で試聴してしまったため、特にダイナミック型の機種の評価が低めになってしまっています。帯域バランスについては素のチューニングより低音寄りになっているものとお考え下さい。

評価レポート


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今回試聴した機種一覧

Technics eah-tz700

帯域バランス : ややローよりのドンシャリ
音場 : 4
装着感 : 5
解像度 : 3.7
音色傾向 : 少しシャープ寄り
向いてそうな音源 : ロック EDM
コメント : 低音の深さは十分だけど高音もかなり綺麗に出る。一番凄いと感じたのは中低音域の生生しさ。どちらかと言うと低音寄りでダイナミック型らしいサウンドバランスにはなってる。情報量はかなり多く純正ケーブルの時点で13万の元取ってるのでは?と思えるクオリティ。音場も広めで相当楽しい。

素点7.7 好み評点4 計11.7点

Campfire Audio ARA

帯域バランス : ハイ強めの逆ピラミッド
音場 : 4
装着感 : 3
解像度 : 5
音色傾向 : シャープ
向いてそうな音源 : 低音多めの音源以外
コメント : メダよりハウジングが数段デカくなった。高音の鳴り方がA8000に似てる。解像度はメダと比較して激増していて、音場も広くなった。メダより劣化しているというレビューには共感できないが、低音も含めた全体のバランスはメダの方が良かった気がする。ボーカルが最前線には出てこないので、メダより聴きやすいのは多分こっち。

素点9 好み評点2 計11点

Campfire Audio Dorado2020

帯域バランス : ハイ多めのピラミッド
音場 : 3
装着感 : 4
解像度 : 3
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 洋ロック ライブ系
コメント : でかい割に耳への収まりはそれなりに良い。ドライバが同材質だけあってベースの音質は初代VEGAを思わせるものがあり、一言で言えばVEGAの音場を削って高音の繊細さを足した感じ。低音が結構深く重低音までしっかり出るが、高音もBAのせいか繊細さがある。が....全体の繋がりが不自然で、ドンシャリを志向したけどドンシャリになりきれてない低音ホンというような何とも言えない印象を受けた。合う音源はVEGAと大体同じ。

素点6 好み評点1 計7点

Campfire Audio VEGA2020

帯域バランス : 釣り鐘型
音場 : 3
装着感 : 4
解像度 : 3
音色傾向 : 若干シャープ
向いてそうな音源 : VEGAよりは色々聴けそうだが、大枠同じ
コメント : エージング不足なのかボワ付きがある。VEGAの音場は気持ち薄れた。中低音全体のアタック感が増していて、ATLASの後継的な音という意見にものすごく納得した。が、ATLASよりは聴きやすいバランスになっている。高音はVEGAとさほど変わっていないが分離感が増した気がする。高音はVEGAに勝るがVEGA最大の個性である空気感は薄れてしまった。リケで補完しようにも中域が濃すぎて改善は難しいのではないか?と思う。DORADO2020よりはこちらの方が聴きやすい。

素点6 好み評点2 計8点

Moondrop Illumination 光


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帯域バランス : フラット
音場 : 3.7
装着感 : 5
解像度 : 4
音色傾向 : クール寄り
向いてそうな音源 : JPop アニソン
コメント : 感度高め。帯域バランスはRE2000と似ている。が、RE2000よりは低音に癖が無く、高音の刺さりも殆ど無い。高音が特に綺麗で、電子楽器の分離感がかなり良い。バランスも情報量も全帯域隙が無く、10万以下なのが信じられない音。イヤピのせいでうまくフィットせず高音寄りに聴こえてしまったが、低音は多分イヤピで補強可能なのでフラットだと思う。ハウジングの収まりはとても良いので装着感もおそらく良い。

素点7.7 好み評点4.5 計12.2点

Noble Audio KHAN

帯域バランス : ハイよりのフラット
音場 : 4.4
装着感 : 4
解像度 : 5
音色傾向 : 硬質でカチっと鳴る レアな音色
向いてそうな音源 : 洋楽 ロック
コメント : トリプルハイブリッドだけどBA型の特徴が濃く出た音に感じる。情報量はデタラメに多いのだが、厳密に言うと音を細かく分解するより輪郭をはっきりさせるタイプだと思う。低音も必要十分には出ている。ローとピエゾの音がミックスして独特の音響感が生まれている。これは唯一無二の鳴り方、広がり方だと感じた。結構欲しい。

素点9.4 好み評点4 計13.4点

SENNHEISER IE900

帯域バランス : フラット
音場 : 4
装着感 : 2
解像度 : 4
音色傾向 : 若干シャープ
向いてそうな音源 : 洋楽 ライブ系
コメント : 結構鳴りにくい。最近の発売機同様耳掛け方式になったものの、肝心の装着感は800からそれほど改善していない。一体感と高音の綺麗さがとにかく際立つ。情報量が800と比較して激増していて、高音の分離感が凄まじい。低音も必要十分で音場も良い。情報量が多いのに取り繕ってる感が皆無なのが超絶好印象。RE2000やA8000に連なるダイナミック型の最終進化系の1つではないか?ハウジングの形状と装着感さえ良ければ.....。

素点9 好み評点3 計12点

F Audio Dark Sky

帯域バランス : フラット
音場 : 3
装着感 : 4
解像度 : 4.4
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 割と何でも
コメント : 比較的癖のないフラット。自然さという意味ではピカイチ。高音の分離感がかなり良く細かい音までキッチリ前に出てくる。低音はダイナミック型らしい沈み方をする。純正LYRAⅡ程ビシビシ沈まないけど、傾向としてはLYRAⅡの低音と似たものを感じる。優等生すぎてコメントする事が無い。人によっては一点物購入して沼が完結するイヤホンかもしれない。

素点7.4 好み評点3 計10.4点

JHAudio✕Astell&Kern Layla Aion

帯域バランス : フラット
音場 : 4.3
装着感 : 4
解像度 : 3.4
音色傾向 : ややウォーム
向いてそうな音源 : 何でも行けそう
コメント : 片側BA12基という超弩級構成からはやや拍子抜けする音。べらぼうに解像度が高いわけでもないしキレッキレの高音が出るわけでもない。が、アナログ感と自然さに振っているかのような音色になっていて他のマルチBAとは別の味わいがある。全音域の情報量が多いが、靄のかかったような出音のため解像度はさほど高く感じない。音場は広めで音像もかなり濃いタイプ。音源を選ぶ感じが全く無いので、1点物と言うか1つあればそれで完結してしまうイヤホンと感じた。

素点7.7 好み評点4 計11.7点

newspring NSE1000-B

帯域バランス : ピラミッド
音場 : 3
装着感 : 3
解像度 : 3
音色傾向 : ウォーム
向いてそうな音源 : ロック
コメント : 一聴して低音過多とわかるサウンド。高音はよく響くのだがなお低音が多い。音色は真鍮らしいが同じ真鍮でも情報量はRE2000の圧勝、音場もRE2000の圧勝、とちょっとこの価格帯で特徴を見出すのは難しい音。低音の量感の割に低域にボワ付きが少ないのは良いのだが、率直に15万の価値は無いと言わざるを得ない。低音ホン✕真鍮らしい響き という属性に刺さるユーザーには良いかも。

素点6 好み評点2 計8点

Acoustune HS1697ti

帯域バランス やや低音寄りのフラット
音場 : 3.4
装着感 : 4
解像度 : 4
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 何でも及第点は取るが、ホップが最も良い
コメント : パッと聴いてわかる綺麗系。一体感と全音域隙の無い情報量を兼ね備えた万能サウンド。高音の電子楽器も綺麗に分離され、曲の旨味を逃していない感じがとても良い。一方で綺麗系らしく音場感は薄めになっている。FW10000とユーザー層が被りそうな印象を受けた。FW10000ほど「生」な感じはないものの、これも一点物として成立しそうな音だと感じる。価格を考えると唯一無二の選択肢になりうる。

素点7.4 好み評点 4 計11.4点

AAW Mockingbird

帯域バランス : 釣り鐘型
音場 : 3.4
装着感 : 6
解像度 : 4
音色傾向 : ノーマル
向いてそうな音源 : 洋ロック ライブ系
コメント : 中低音域が重い釣り鐘型サウンド。こもり気味でいまいち抜けの悪い音だけど、情報量はしっかり出ており高音の分離感はそれなりに良い。Layla Aionで感じたようなアナログ感を感じる。Aionより分離感は良いが、音のバランスは悪いといったところ。低音が深めの曲では独特の重々しく広がる空間表現が感じられ、洋ロックやライブ系の音源で真価を発揮するという印象。

素点7.4 好み評価3 計10.4点

AAW Canary

帯域バランス : 弱ピラミッド
音場 : 3.7
装着感 : 5
解像度 : 5
音色傾向 : ややウォーム
向いてそうな音源 : 割と何でも
コメント : 艶がかった弦楽器の音が響いてくる。楽器の響きはあるものの押し出しはそれなりで、ボーカルも適度に距離があり非常に聴きやすい。解像度分離感共に最高レベルだが、ハイブリッドらしく変に靄かかった部分はある。音抜けも良く、ゆったりした空間が作られている。これでクリアさがあれば完璧だった。

素点 8.7 好み評点4.5 計13.3点

総評

私はダイナミック型の滑らな音や空気感が好みで主に使っているのもRE2000、VEGA、LYRAⅡとほぼダイナミック型ですが、今回はこれまで毛嫌いしていたマルチBAやハイブリッドについても聴いてみました。全体としてキャラが個性豊かになり、かつて多くのメーカーがBAの搭載数を先を争って競い情報量追求型のサウンドを突き詰めていた時代とは全く違ったキャラの多ドラが増えたなという印象です。
特にCanaryの情報量と一体感を両立したサウンド、LaylaAionのマルチBAらしからぬ解像感、KHANの唯一無二の音場は印象的でした。

最近はとにかくハイエンドダイナミックのクオリティが高く、特にA8000、Dream等は一本持っているだけでイヤホンスパイラルを終わらせるような実力を持っていると思います。
しかし、2年程多ドラを聴かないうちにこれまでダイナミック型のアイデンティティだったはずの「一体感」という部分で多ドラがかなり追いついてきていたので、今回の試聴は多ドラの認識を改めるきっかけになりました。
情報量や中高音の分離感などは元々BA型、ツイーターの方がダイナミック型より有利ですので、一体感とそれらの長所を両立した機種が出てくると先述のA8000やDreamよりも良い選択肢になり得るな.....と考えさせられます。
今後多くのメーカーがピエゾ、静電型を取り入れていくとさらに音の多様性も増して面白くなりそうなので、期待したいですね。

【ケーブルレポート】SXC8

以前から欲しいと思っていたケーブルですが、先月末に一万円代後半で新品在庫を見つけてしまったため購入しました。中華イヤホン以外ではマイナーなイメージのある2Pinですが、さすがにコイツのはんだ付けはやりたくないので換装は考えていません笑。
既に山と情報が落ちているケーブルですが、今回手元のRE2000と比較試聴をしたため取り回し面含めて所感をまとめておきます。

取り回し面

太さ、重さ、固さとどれを取っても規格外です。これよりデカ太のイヤホンケーブルとなると、ロシアのアレしか思いつかないレベル。とにかく扱い難さの部分は世間で言われ尽くされているため、今更私が言うことは多くありません。
あえて個人的印象を言うなら、タッチノイズは過去私が所持していた中で最も酷かった「Nobunaga labs 景光」を超えており、さらにその景光より数段太いです。


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右はLitz wireで、その他は手持ちの中で太いケーブルを集めました。大きい部類のケーブルと比較すると、SXC8のデカさが一層際立ちます。

固さについては確かに異常なものの世間で言われてるほど絶望的って訳でもなく、ちょっと大きめのケースがあれば収納は問題にはなりません。まぁそれでも耳掛け部分はどうしようもないので、ワイヤーを無理やり曲げて調整するしか無さそうです。
私の価値観としてデカかろうが太かろうが音が良ければ問題はないのですが、タッチノイズが極力発生しない環境でしか使えないということは歩行中使用はNG、各種乗り物の中も困難と、遮音性底辺のRE2000と使える場所が被っています。それもあってRE2000用に購入したのですが、、。

音質面

今回は使用中のオーグライン8芯とどちらが良いのか比較する形になりましたが、それぞれの音質傾向について比較してより明確にしたかったので、DAPの方はM11Pro固定で4パターン試しました。

パターン①RE2000 + オーグライン+α,+pt 8芯 + A5
パターン②RE2000 + SXC8 + A5
パターン③RE2000 + オーグライン+α,+pt 8芯 + Mojo
パターン④RE2000 + SXC8 + Mojo


結果から先に言うと、数時間の激戦の末、SXC8はオーグライン8芯に敗れました。

音質レベル、好みを総合的に評価すると③→②→①→④の順に良かったです。このうち①と④は明確に相性が良くなく早々に除外。最後は②と③のどちらが良いのかで聴き比べとなりました。

③RE2000 + オーグライン+α,+pt 8芯 + Mojo

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音質は手持ち機種の中で最も「完璧」に近い

③は実は2年近く使っている構成で、オーグラインの+pt4本をLRそれぞれのプラス極に、+α4本をマイナス極に繋いで自作したケーブルを使っています。同じものをオヤイデに製作依頼すると6万弱かかりますが、自作できるなら材料費3万4千円程度で済みます。(編み込みが下手だと丸めたときぐちゃぐちゃになりますが)最大の特徴は隙のない帯域バランスと唯一無二の音場で、全音域がほぼフラットに聴こえ、特定の音が不自然に強調されたり響いたりしません。音場も異様なまでに広く、聴こえる範囲どうこうと言うよりも遠くからブワッと拡散して上下に抜けていくような独特な広がり方をします。この感覚はイヤホンと言うよりも開放型ヘッドホンに近いです。音色的にもオーグラインと相性が噛み合っているようで、RE2000のウォームで艶かかった音がオーグライン+Ptによってさらに抜け良く繊細さを増した音になっています。
こういうタイプなので特に音源相性も無く、何を聴いても気持ちいいです。音圧がさほど強くないせいか聞き疲れもしませんし、個性の強さと万能さを両立しています。
強いて言えば高音がやや刺さり気味ですが、これはシンバルなどの音を引き立てる効果も出していますし気になる程ではありません。
チューニングにこれと言った穴が無く、唯一無二の音に仕上がってもいるので、率直に遮音性以外の欠点を見つけるのが難しい構成です。これを超えるのは生半可な出費じゃ厳しいんじゃないかと思いつつも、逆にSXC8の音質全振りっぷりにそれだけ期待していました。

②RE2000 + SXC8 + A5

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中々良かったものの、高音域が見劣りした

②は今回購入したSXC8にFiioのアナログアンプA5を組み合わせた構成です。最大の特徴は中低音域の生生しさです。素の解像度高さと空間表現力にSXC8の濃密な中低域が加わり、臨場感溢れる音になりました。さらに人の声の位置がオーグラインより近くなり、これだけの濃密な情報量を破綻無く鳴らし切るRE2000のポテンシャルにも改めて驚かされました。帯域バランス的にはダイナミック型らしいピラミッド型で、音色的にはウォームが少しタイト目に寄った感じです。低音の量感も増え迫力がかなり増しました。ただ、言ってしまえば「他のイヤホンでも似た傾向が実現出来てしまいそうな音」でもありました。中低音域の質で言えばDITA Brassをイメージしてしまいましたし、音圧が強くなり出音の位置が近くなった分拡散するような音場感は消えました。
私に言わせれば、RE2000の唯一無二性は何と言っても音場感です。他にも優れた部分は幾らでもあるのですが、それらの長所は唯一無二ではありません。他のイヤホンでは考えられないような縦横に広がりまくる圧倒的な鳴り方こそが、20万の価値と言っても過言ではありません。
この部分が潰れるようではそれはRE2000ではない!と思いながら聴いていたところさらなる粗が.....
中低音域に圧倒されて聴き逃していたのですが、高音域のハイハットやシンセの音が部分的にマスクされ聴き取りにくくなっています。特にこれらの音が多い楽曲を聴いていると分かりやすいですが、ナオト・インティライミの「ありったけのLove Song」でこれに気づき、続いてfhanaの「ホシノカケラ」を聴きながらコイツは無理だと思い至りました。音場感どころか高音域の解像度まで下がってしまってはさすがに聴いていられません。
誤解を恐れずに言うと、RE2000の高音域や女性ボーカルは結構ハスキーで刺さりやすいのですが、SXC8はちょっとその刺さりの程度も許容圏外でした。特にmojoと合わせた④の組み合わせで刺さりが酷く、A5に変えたところ刺さりは減ったものの情報量が潰れるのは避けられなかった、という感じです。

情報量+音場がSXC8の特徴としてよく挙げられていますが、この構成の場合は低音寄りで音圧の強いSXC8がこちらも僅かながら低音域寄りかつ繊細な音のRE2000と上手く噛み合わず、合わせた結果中音域以上の情報量が潰れぎみになってしまいました。対してオーグライン+ptは銀、金、プラチナの合金で割合的にはほぼ銀ですので、ベースの性質は銀で比較的音色が明るくなり高音域が綺麗に出る特徴があります。+αも使って音場感も補っているため、結果的にRE2000の特徴を活かす事ができています。単体ではどちらも高い実力を持ったケーブルですが、このあたりが相性差になったという印象です。


余談ですが、ここ最近幾つかケーブル試聴をしていて、「ダイナミック型ならば〇〇線が良い」とは一概に言えないと思わされました。今使っている主なダイナミック型の中で相性が良いと感じたのは

LYRAⅡ→銀線もしくは銀銅ハイブリッド
VEGA→銅線ないし銀メッキ銅線
RE2000→銀線

という感じです。これもケーブル独特の音響特性は無視したざっくりとした傾向ですので、実際に聴いてみるまではわからないという認識のほうが正しいかも知れません。

総括

ほぼRE2000用に購入したSXC8ですが、今回は相性の問題から採用とはなりませんでした。
箱出し一発目は中域主体で低音はボヤけてレンジも狭く取り柄が一つもない音でしたが、20時間ほどの鳴らし込みで劇的に変わりました。特に低域の分離感と音場が向上したので、箱出しを聴いて諦めてしまうのは勿体ないケーブルです。
音質レベルとしての実力は疑いようがないのですが、正直このケーブルは取り回しのみならず音質相性的にも扱いが難しそうです。何せ音圧強い、情報量多い、低音寄り、音場は広め、と単体でかなりキャラを出してしまうので、イヤホン本体と合わせたときどのような音質傾向になるのかがほぼ予測不能です。
ネット評でBA型との相性を推す声が多いのですが、恐らくは音圧の強さと低音寄りのチューニングでBA型との相性補完をしている方が多いのかと思います。ダイナミック型のモデルとも全く合わないことは無いでしょうが、とにかくアテの付けようがない。聴いてみるしかない。そんなケーブルです。

この手の実機試聴情報や意見というのはネット上にあって有りすぎるという事はないと思います。大多数の人の感性では凡そ立ち入らない世界だからこそ、もっともっと情報共有し合って有意義なオーディオライフを送りたいですね。

【レビュー】Luminox Audio Night for Night

昨今は新品オーディオ機器を購入する事もほぼ無かったのですが、ヨドバシでNight for Nightの破格セールがされており、丁度ダイナミック型用のハイグレードな銅線を探していましたので即ポチりました。
私は普段使いしてるイヤホンの殆どがダイナミック型で普段はポタアンに刺して使うことが多いので、ケーブルプラグは3.5mm派です。

製品概要

Luminox Audioは2017年に新設されたばかりの台湾発ブランドで、主にイヤホンリケーブルの開発、製造をしているメーカーです。私は以前本ブランドのDay for Nightを所持していた事があり、見た目に似合わぬ取り回しの良さが印象に残っていますが、音質的には手持ちとの相性が良くなかったため手放しています。
Night for Nightの線材仕様は銀メッキOCC(単結晶銅)と銀メッキ銅のハイブリッド4芯で、メーカーカタログ上の仕様はDay for NightのOCCに銀メッキを付加しただけの違いです。素人目からするとこれだけで音が変わるのかよ?と思うのですが、結論から言うと意外なほど変わるのがケーブルの面白いところですね。

実は、今回購入したNight for Nightは国内代理店経由で販売されている中では最上級のケーブルで、メーカー希望価格で言えばアンダー10万クラスにあたります。しかし、このメーカーはかなり頻繁にセールが行われており、セール時には文字通り価格崩壊レベルの安値になるのでセールを待って購入するのが一般的なようです。発売時9万だったものがセールで6万になったり3万になったりして、「何重価格商法だよ?」と突っ込みたくなる部分はありますが、ハイグレードなものが安く手に入るのであれば待ってでもセールを狙うべきでしょう。

なおLuminox audioの国内代理店はaiutoさんが担当されていますが、他のケーブルメーカーよろしく代理店経由でなく本国のメーカーサイトからも購入可能です。
luminox-a.com.tw

Night for Night よりも上位グレードに位置しているフラッグシップの Luminox や Tri - Light については国内に流通してませんので、欲しければメーカーサイトから直輸入するしかありません。


開封

新品を開封する、という行為自体が久々なので、外装含めて見ていきます。まずは素朴な印象を与える外箱。木目の模様が入っています。
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木目のような模様の外箱

箱を開けると、例によって起毛素材の箱の中にケーブルが入っています。パット見で高級なものだと分かるのはいいですね笑。

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箱の中には起毛素材の下地

続いてケーブル本体です。メーカー画像で見るとほぼ黒に見えるNight for Nightですが、実は全然純ブラックではなく、黒に茶色を混ぜたような独特の色になっています。Day for Nightと同様取り回しは最高です。癖が付きにくく柔軟なのですが、程々に太いおかげで絡まりにくくもなっています。ALO audioのLitz wireくらい細いと絡まりやすいですし、オーグラインなんかは8芯にしても絡まるので、4芯でそこそこの太さがあるのは美点です。扱いやすさはほぼ満点。言うことなしです。

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ケーブル本体

不満ではありませんが、耳掛け部分にメモリーワイヤーが入っている事は意外でした。ワイヤーは結構硬く、Litz wireのものより太くて曲がりにくいです。ワイヤーではなく編み込みと被覆チューブで曲げ癖をつける方法を採用しているメーカーが近年多いですので、このあたりはLuminox audioも今後マイナーチェンジが来るかもしれません。Alo AudioもSmoky Litz wireケーブル以降はメモリーワイヤーを廃止していましたね。

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耳掛け部分はメモリーワイヤー入り

プラグ部分はクリアでハンダ付け跡が見えるようになっています。

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クリアなプラグ部分

・音質評価

前置きはこれくらいにして、次は本題の音質です。
正直、音さえ良ければ取り回しも見た目もどうでも良いというのが本音です。笑
ネット評ではAcoustuneの限定生産モデル「HS1695TI Gold」をはじめ主にAcoustuneのダイナミック型との相性を推す声が多く、前述のDay for Nightが結構音質面で良かったため期待も込めて無試聴購入です。手持ちのダイナミック型とうまく噛み合うかどうかが今回の焦点になります。
そこで、使用頻度がそこそこ高いLYRAⅡ、VEGAの2つでそれぞれ試聴してみました。

【試聴環境】 Fiio M11 pro + Mojo or A5
レーダーグラフについてですが、解像感は情報量と同義です。VEGAの方はチャート上で12まで目盛がありますが、全て10点満点形式で評価しています。遮音性は電車の中で聴くのに支障ないレベルが7.5です。コスパは新品定価ではなく現在の市場流通額を評価基準としています。

①LYRAⅡの場合

LYRAⅡについては純正ケーブルとの相性が比較的良いため、純正と比較しました。

LYRAⅡ + Litz wire

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何のかんので2年以上ローテーションイヤホンの一つになっている構成です。The・ダイナミック型とでも言うべき低音の沈み感が最大の特徴で、「ビシィン!」というようなこのモデルならではの響きがあります。帯域バランス的にはダイナミック型にありがちなピラミッド型です。低音は重い鳴り方ですがほかの音域が特にマスクされる事はなく、ボーカルも良く聞こえます。音色的にはクール系で音抜けが良いサウンドで、中域の情報量が控えめな代わりに見通しが良い音になっています。これら長所の反面、中高音域の楽器の分離感は劣悪な部類です。アコギやハイハット等はあまり気持ち良く聴こえません。低音に特徴がある割には音場も狭く、かなり長所短所がはっきりしていてピーキー。故に音源もかなり選びます。邦楽の男性ボーカルやロック、一部の洋楽は楽しく聴けますが、アニソン等の女性ボーカル系や電子音が多い楽曲はイマイチ持ち味が出ません。
手持ちの中では微妙な評価ですが、低音にハマると定期的に聴きたくなる音です。ベースの音質レベルは十分に高く、電車で何時間聴いていようと不快にもなりません。
一言で言えば、低音の響きとクールで音抜けの良い音色がミソの構成です。

LYRAⅡ + Night for Night

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Mojo + LYRAⅡ + Night for Night

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パッと聴いて驚いたのが、「LYRAⅡの低音」が無い事です。独特の野太い低音が無くなり、高音域の響きとタイト目に沈む低音が特徴のドンシャリサウンドに化けました。パッと聴いて個性を潰してしまったかと思いましたが、女性ボーカルやアニソンの類が格段に良く聴けるようになっており、比較的どんな音源でも楽しく聴ける全方位性を得ました。ダイナミック型のイヤホンは高音をケーブルで補強すると刺さりがちなのですが、LYRAⅡの場合は意外な程に高音が自然な鳴り方をしています。中高音域の分離感がかなり増しましたが、クールで音抜けのいい音色はそのままです。音場感もかなり良くなり、チューニング以外の部分はケーブルのグレードそのままに大幅進化したというイメージです。Night for Nightは銅線ベースなのですが、かなり高音を補強するケーブルのようで、銅線でもこんな音になるというのは新発見でした。私はクールで見通し重視なLYRAⅡのサウンドが好みだったので、その部分が保たれているのは好印象です。Night for Nightは例えばATLASのようなエネルギッシュかつ濃密なサウンドとは相性が良くないのかもしれません。
帯域バランスは大きく高音寄りになったものの、音質レベルは大幅進化。単体で多岐な音源を聴ける万能ホンになりました。

②VEGAの場合

VEGAについては、純正ケーブルの帯域バランスが低域寄りで聞ける音源が非常に限定的だったため、現在使用しているBeat Audio Signal mkⅡ 8 coreと比較しました。

VEGA + Signal mkⅡ 8core

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Mojo + VEGA + Signal mkⅡ 8core (プラグと端子は換装済み)

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某サイトのレビューで複数の方がオススメしていた構成ですが、実際に聴いてみるとあまり相性が良いとは思えない構成でした。
VEGAは純正ケーブルでは低音寄りになりすぎていて音の重心が低く、確かにチューニングはおかしいのですが音色自体はクールで見通しが良く、音場も広大でした。しかし、Signalは単体では中音寄りのケーブルで音像を濃密にさせるタイプであり、ゆったりした空気感と音場がミソのVEGAの音とは相性が良くないと感じました。音質レベルが高いのはわかるのですが、VEGAの個性を丸潰しにしてしまっています。
音が濃密になりすぎて音場も狭くなり、リアリティは純正と比較しても半減しました。まあ、ポータブル環境でリアリティがどうこう言う時点でオーディオファンから素人扱いされそうですが....。
ここまで散々な評ですが、チューニングとしては純正で過剰に低音に寄っていたものが改善され、中域主体のエネルギッシュなバランスになりました。低音域は元々質が高いため、このケーブルでも深く沈む感じがあります。高音はやや刺さり気味でウォーム寄った音色になっており、全体として濃密な情報量でふくよかに聴かせるタイプです。
ベースの音質レベルは明らかに上がっており情報量も増えているのですが、イヤホンの特徴とケーブルの特徴が噛み合っておらず、使い分けする上では相性が良いと言えません。濃密さを求めないのに8芯にしたのが間違いとも言えますが、そもそもSignalは超高解像度系のBA型や、出音が近いイヤホンに合うケーブルだと感じました。最も、購入してからプラグとコネクタを私が換装しましたので、ハンダ付けの下手さが原因でノイズが増えたりしているという可能性はありますが.... 笑

VEGA + Night for Night

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A5 + VEGA + Night for Night ミニミニはSXC8

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今回の目玉構成。勿論ダイナミック型と相性が噛み合うようアテをつけて購入したわけですが、これが本当に良かった!
音抜けが良くクールで、低音が支配する空気感、ゆったりした音響感が伝わって来ます。帯域バランス的には純正での深く重い低音はそのままに、高音域の解像感が大きく増した弱ピラミッド型だと感じます。VEGAならではの音場の広さを保ったまま中高音域の解像感が向上し、音の重心が程よい高さになりました。中高音域の情報量は8芯のSignal mkⅡには劣りますが、とにかく音場感が抜群に良くなり見通しが全然違います。LYRAⅡ同様VEGAは出音の鮮やかさは控えめで繊細さに重きが置かれているという特徴があり、この部分が全く濁されていないのも非常に好印象です。
不満が無いわけではなく、RE2000のようなどんな音源でも万能に聴ける音ではないですし、レビュワーによく言われる「無印VEGAの高音頑張ってる感」も解消していません。しかし、チューニングといい音色といいVEGAの個性とマッチしたベクトルに仕上がっていますし、何よりもVEGAにしか出せない低音を保ったまま音色が明るくなり広い空間を感じられる音になったのが満足です。
また、この構成については、音像がはっきりする代わりに中音域に盛り上がりがあるMojoよりも全体の解像感を満遍なく上げてくれるA5の方が適役でした。
VEGAを複数のケーブル、構成で聴いて思ったことですが、VEGAについては下手に帯域バランスをいじらずに純粋にパワーを上げるか解像感を上げるようなケーブルの方が良いと感じました。Twitterで「Reference8との相性が良かった」と言っている方が居ましたが、その方は私と同様VEGAのキャラを潰したくない方なのかと思いましたね。勿論VEGAはダイナミック型の中でもかなりのパワーを要しますので、今回の構成も全然パワー不足で、実力を出し切るには据え置きしかないという印象です。

最後に、少しケーブルレビューと話がそれますが、VEGA+Signal mkⅡもネットレビューで勧めている方がいた構成ですので、私がVEGA + Signal mkⅡで感じた違和感の理由について言語化しておきたいと思います。
VEGAを一言で表現すれば、「イヤホンとは思えない低音が味わえるイヤホン」なのですが、決して低音厨が期待するような量感は出ていませんし、ブーミーに響く低音でもありません。VEGAの低音は量ではなく質がミソ。言うなればどのイヤホンよりも深く、そして静かに沈む美しい低音です。私はVEGAの真価は「低音が支配する空気感」にこそあると思います。低音が他音域をマスクしないけれど全体に影響を及ぼすように響き、他音域と合わせて独特の空間表現が生まれるという流れです。この部分が潰れてしまうと「それ、VEGAである必要なくね?」と思ってしまうので、音像濃密型のSignalはVEGAのキャラを潰していると感じた、というわけです。
私はリケーブルにおける「相性が良い」という表現も解釈が分かれると思っていて、「そのイヤホンの粗となる部分を埋めて中庸で何でも聴きやすい音にしてくれる」ようなものを相性が良いと言う人も居れば、「そのイヤホンが持つ個性にフォーカスし、それを崩さないまま音質向上して唯一無二の音にしてくれる」ようなものを相性が良いと言う人も居ると感じています。前者は一点物で何でも綺麗に聴ける事を重視する人に多いタイプだと思いますが、私は気分や聴きたい音楽次第で複数のモデルを使い回すタイプのユーザーで、故に私の「相性がいい」の解釈は後者です。ANDROMEDA然りVEGA然り、万人受けしない個性派揃いのCAイヤホンだからこそ、尚更キャラを追求してオンリーワンの愛機を作りたいと思いますね。




・余談
VEGAに換装予定で購入していたSignal mkⅡについては、LYRAⅡに換装してみたところ意外なほどにしっくり来ました。元々LYRAⅡがそこまで空間重視の音創りでは無かったという事もありますが、LYRAⅡの野太い低音とSignalの濃密な情報量が噛み合って一気に繊細かつ厚みのある音色になりました。帯域バランス的には中域が濃くダイナミック型らしさは薄れましたが、中高音域の情報量が増えて全帯域が濃密になり、これまで聴いたことがないタイプの音が出来上がりました。決して自然な鳴り方ではないものの、リスニング機としてはかなり楽しいです。どの音源を聴いても及第点以上にキャラを出してくれるので、地味に相性の良さレベルはVEGA+Night for Night以上かもしれません。
VEGAでどうにも使い物にならなかったSignalが、似たようなタイプだと思っていたLYRAⅡでしっくり来るんですから、やっぱりリケーブルは面白いですね。

・総評

破格の安値で入手したNight for Nightでしたが、期待以上の音質変化で驚かされました。Day for Nightと仕様的にはそれほど変わっていないはずなのに、エネルギッシュな響きが特徴のDay for Nightと打って変わってこちらは繊細な音と広い音場感が最大の特徴になっています。グレード差もあるものの、私はDay for Nightよりこちらの方が断然好みでした。
また、銅線ベースのケーブルながら高域寄りで、高音の解像感がかなり向上するのにも驚かされました。帯域バランス的には元のイヤホンに高音が足されて低音の量感はやや減りますが、低音の沈み感自体は変質せず、銅線らしい深く沈む特徴を保っています。
ネット評価を見るとAcoustuneのダイナミック型イヤホンと特に相性が良いと評価されていますが、実際に聴いてみた結果、程度の差はあれどピラミッドバランスのダイナミック型とは比較的相性が良いのではないかと思いました。
扱いやすさについては言わずもがな大満足で、セール時(ポイント還元で実質30000円ほど)であれば唯一無二の選択肢になりうるケーブルだと思います。

イヤホンハウジングの素材まとめ

イヤホンの歴史って、最初にイヤホンらしいイヤホンが開発されてから、まだ40年もたってないんですよね。
イヤホンのハウジング部の素材は初めはプラスチックのみだったようですが、最近は本当に様々な種類のハウジング素材が出てきています。 そこで、備忘録も兼ねて2020年現在世に出回ってるイヤホンのハウジング素材について、まとめを作ってみました! 材質ごとに音質特性や著名なモデル、その他の特徴等をまとめていますが、以下は完全なる個人的評です(笑)。

それではさっそくまとめていきます!

 

 

 

材質

①プラスチック系

②金属系

③木材系

 

 

 

① プラスチック系

まず思い浮かぶのは、おなじみプラスチック系素材ですね。主に軽量であること、形状加工がしやすいことが素材共通のメリットでしょうか。

ぶっちゃけ、大半のイヤホンと言うか、低価格帯モデルを中心に殆どのイヤホンはプラスチック製でしょう。
加工のしやすさ故、一人一人の耳型に合わせて筐体を特注できるカスタムIEMにもこの素材が使われています。殆どのカスタ厶はアクリル樹脂製だとか。
これと同じ理由で、遮音性や装着感には優れているモデルが多いのも特徴です。

残念ながら、他素材に比して音質面で評価すべき点はありません(笑)。と言うか、他の素材のキャラが濃すぎて、相対的には見るべきものがなくなりがちです。もちろん、プラスチック筐体でも評価の高いハイエンドイヤホン等はあるので、一概に低音質とは言えませんね。
ざっくり言うと音の響き感が余り無く、どちらかというと高音の方が得意という感じです。


主なモデル : SENNHEISER IE40 PRO

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②金属系

金属素材の場合、加工の手間や研究開発費の問題もあってか、プラスチック系の素材よりも高価なイヤホンに用いられる傾向にあります。また、音質的に優れた要素を持っている素材が多いですが、一方で装着感や遮音性はプラスチック素材には劣る傾向があります。
一言で金属と言っても、個々で大幅に特性や音質傾向が違うので、一つ一つまとめていきたいと思います。

 

  • アルミニウム

軽量で、金属素材の中では加工がしやすいのが素材的なメリットだと思います。
ただし、耐摩耗性は低いので傷が付きやすいのがデメリット。傷防止のため、表面にセラミックコートやらアルマイト加工やらを施しているものもあります。

音質的には、中〜高音域の表現力に優れた素材だと思います。音色がシャープで綺麗系の音になる特徴もあるようです。一方で音場や響きといった空間表現力は控えめです。
どちらかと言うと、BA型に評価の高いモデルが多いように感じます。


主なモデル : Noble Audio Kaiser 10 Universal Aluminium

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  • ステンレス

イヤホンハウジングとしてはかなり重い素材で、加工性が悪いのが材質的特徴です。

音質的には、音の輪郭がはっきりしていてシャープ寄り、かつダイナミクスの高い素材だと感じます。どちらかと言うと低音の量が多い音ですが、ドライバの種類問わず評価の高いモデルは多いように思います。


主なモデル : TANCHJIM Oxygenf:id:Feever:20200622040806j:image

 

  • チタン

比較的軽量ですが、ステンレス以上に加工が難しい金属です。加工の難しさから発売しても採算性に問題が生じ、すぐに廃盤になった例もあります。表面に酸化皮膜が生じるため、錆が発生しにくく傷もつきにくい特徴があります。

音質的には、高音域が目立つ鳴り方をするのが最大の特徴です。また、解像度が非常に高く、ソリッドな音色を持つ傾向にあります。帯域バランス上、どちらかというとダイナミック型との相性が良い素材に感じます。

 

主なモデル : Echobox Nomad N1

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  • 真鍮

銅と亜鉛の合金で、亜鉛含有率が20%を超えるものを指します。重い素材ですが柔らかく、加工性は高い素材です。柔らかい分耐摩耗性は低め。また、真鍮むき出しだと錆が発生するため、メッキ等金属膜で補っているものもあります。真鍮筐体は基本的に金色なので高級感があるのはメリットですね。

音質的には、低音域の量感が増え、拡散するような音響感があるのが特徴です。響きの良さゆえか、空間表現力に秀でたモデルが多いです。チタンとは異なり音色はウォーム傾向だと感じます。

 

主なモデル : DITA brass

 

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イヤホンの素材としては余りメジャーではありませんが、亜鉛合金としてハウジングに採用された例もいくつか存在します。が、実は鉄と遜色ないくらいに重い素材です。

音質面については情報が少ないですが、PINNACLE P1を聴く限りではかなり個性の強い素材ではないかと思います。高音の綺麗さはチタンに相似。空間表現力も高そうです。

 

主なモデル : MEE audio PINNACLE P1


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  • 金属ガラス

近年実用化が進んできた合金による素材です。リキッドメタルとも呼ばれます。まだまたま研究途上にあり、イヤホン筐体への実用は極僅かですが、軽くて強度が高いのがメリットの様です。実際に使っていても傷がついた事は有りません。

音質面は情報も少ないので不明です。
開発元が材質を明言しているモデルも、LYRAⅡをはじめ数種しか無いのが現状です。

 

主なモデル : Campfire Audio LYRAⅡ


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イヤホンハウジングとしてはほとんど採用されたことがない素材で、酸化物のジルコニアの方がむしろ実用例が多いです。チタン族元素なので錆が生じないことなど、材質的特徴はチタンと似ています。

素材固有の音質傾向は、出回っているモデル自体がほぼ無いので不明です。

 

主なモデル : SONY IER-Z1R


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オーディオケーブルで最も広範に用いられる素材ですが、イヤホンのハウジングにも使用例があります。真鍮と異なり加工性が良くなく、さらに真鍮よりも重いため好んで使われる事は少ないようです。

音質的には目立つ点が少ないです。高音域が綺麗に感じたりもするのですが、全体として音色が暗めです。響き等も真鍮のほうが勝っているように思います。

 

主なモデル : qdc 1LE


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③木材系

特色ある金属系素材がたくさんある中、木で作られたハウジングなんてのもあります。
日本のメーカーだとJVCオーディオテクニカが採用していますね。
金属よりは軽いため、イヤホンとして扱いやすい素材と言えます。木材自体の加工や研究開発に手間がかかる為か、金属素材同様にそれなり以上の価格帯のモデルが多いです。

実際の音質面では、音色がウォームで独特の音響感があるのが特徴です。尖った要素が余りなく、帯域バランス的にも原音忠実というイメージの音に感じられます。
木材の中でも木の種類によって音質に差が出るようで、例として針葉樹と広葉樹ではかなり響き方が違うようです。

 

主なモデル : JVC HA-FW10000


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長くなりましたが、今のところ大体のイヤホンハウジングは上にまとめた材質、もしくはそれに類する素材から作られています。

もうほんとに、このジャンルは拘れば拘る程金銭的負担が加速するので、金の切れ目が縁の切れ目と思ってましたが、音を聴くと追求したい衝動がまた出てしまいますね笑。

次は何を書こうかなぁ、と思いを巡らせる4時44分でした。

 

ついに到達!イヤホンの終着点とは?

オーディオの世界に興味を持ってから色々なイヤホンを聴いてきましたが、今回ついに1つの終着点と思える音を見つけました。

 

その終着点にたどり着くまでの経緯をざっくり紹介しようと思います!

 

訳あって長時間電車に乗る生活になり、イヤホンの音に拘りたくなった矢先、最初に購入したのがこの子でした

 

①RHA MA750i


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友人がSE215speを使っており、最初はSE215を買う予定でしたが、ネット評を見るとこちらも高評価だったので気になり購入!

丁度一年前くらいでしょうか、去年の夏頃手持ちのHuawei P10Liteで聴いていました。ちょっとフラットで綺麗な音くらいの認識でしたね。

 

別に聴いてて普通でしたし、シュア掛けと見た目以外は特に関心なし!笑

当時はリモコンが音質に影響する云々すら知らずに購入していました。

 

          ↓

 

②Dynamic motion DM200H


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そんなこんなで何も変わらないオーディオライフを送っていました。

 

MA750も聴き飽きた頃、この子が某サイトでコスパ最強機種と評価されていたのを見て、Amazonに25000円台の新品在庫が落ちていたので即ポチりました。

 

スマホで聴きましたが、これは明らかに違いました!音楽を聴いて楽しいと思ったのはこれが初めてでした。

まず人の声の質が圧倒的に違いました。(特に女性ボーカル) 帯域バランスとしては少しドンシャリなのですが、低音から高音まで滑らかで不快になる要素が無く、ボーカルの距離感と音場感がとてもよい。

 

このイヤホンがきっかけで音を聴く楽しさに目覚めたので、自分にとっては思い入れのあるイヤホンです。

 

         ↓

 

③QDC 5SH


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もっと高い機種ってどんな音なのかな~と思い、秋葉の某専門店に行きました

店員がこの子を勧めて来て、W60と悩みましたが購入!

 

所謂多ドラは初めてでしたが、中々の解像度でボーカルが綺麗なイヤホンでした。ですが、チューニングはどうもしっくり来ず、平面的な音と中低音のバランスの悪さが気になってしまいました。

 

率直に、この子はちょっと失敗したなーと思うレベルでしたね笑 程無くして売りました。

 

         ↓

④Campfire Audio ANDROMEDA

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10万出して失敗した訳ですし、今度は後悔したくなかったのでハイエンド全部試聴するつもりで再び秋葉へ

当初全くのノーマークでしたが、この子を聴いた瞬間他の機種が全部頭からぶっ飛びました。

 

調べたところでどこも価格変わらないし、その場でお持ち帰りしました。

 

音は唯一無二の塊です。高音の響き、包み込まれるような音像、ボーカルのリアルさ。中高音が凄く目立ちますが腰高な音という訳ではなく、チューニングで不快な点もない。

純正ケーブルでのチューニングバランスを崩したくないからリケーブルできません笑。

 

多分10万以上のイヤホンで最も売れたモデルでしょう。(Xelentoを含めるかどうかで変わる可能性もありますが、、)

 

でも自分は実際に聴いてみるまでこのメーカーの存在すら知りませんでした。

本当に、「百聞は一聴にしかず」でしたね~

 

         ↓

 

⑤Campfire Audio LYRAⅡ


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ANDROMEDA購入以来何を聴いても驚くことが無くなったので、イヤホン単体としては音質の上下の違いは殆ど極めていて、あとは傾向とか好みの差なのかと思い始めました。

 

そんなとき、Alo Audioの直販サイトでこの子が400ドルで出ており、ダイナミック型のイヤホンが欲しかったので即ポチ!試聴ナシ!( オイゞ(`') )

 

でもCAのことだからハズレはないだろと思ってましたね。

そして結局アタリでした笑。

ザ・ダイナミック型という低音の響きと、ボーカル抜けの良さ。情報量も十分で、ANDROMEDAといい感じに使い分けできることも満足でした。

 

でも、極みかと言われると何か違う。何かが足りない。

 

          ↓

⑥Hifiman RE2000


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何を聴いてもそこそこイケる高品位な音と言うか、フラットで尖りが無いけど楽しい音と言うか、そんなのが欲しくて調べた中に、RE2000がありました。

 

一応他の候補もいくつか試聴して、最後はHA-FW10000と一騎討ちになりましたが、僅差で迷って居たときに中古で安い案件があり、結局この子になりました。

 

バランスケーブルは色々聴き迷っていましたが、オーグライン8芯にすると化けましたね~これがこれが、、

その音質は

・ダイナミック型なのにBAっぽい高音も出せる。ハイブリッド型のような音。

・イヤホンながらヘッドホンのような低音。

・フラットバランスで、ボーカルもほどよい距離。

・10万クラスのマルチBAを凌ぐ高解像度で分離感もいい。

・情報量は多いけどボーカルや繊細な音を阻害しない

・ヘッドホンじみた音場感。

 

ヤバスギィ!

誉めすぎてるように聞こえるけど、聴きながら書いてるとこれ以外の書きようがない笑。

 

ダイナミック要素もBA要素もあって癖が少ないフラットバランスで解像度も分離感も優秀で音場も広いイヤホン!これは究極と言ってもいいのでは?!

 

オーグラインは単体でかなり情報量というか音の厚みが増えるケーブルなので、その厚みがRE2000の音場の広さを阻害してる感じはありますが、それすらも程好いバランス感になっている!!

 

欠点らしい欠点はウォーム過ぎるってことくらいですね~。

ウォーム過ぎるので思ったほど何でも聴けるタイプではなく、トリハダものなのはロックくらい。あとはどの音源も及第点レベル といったところ。

 

オーグラインにリケーブルして以来、他の機種の使用頻度が下がってしまい使い分けどころの話ではなくなりました。

 

正直、装着感と遮音性さえ優秀なら、ダイナミック最強候補だったとすら思っています。 (装着した瞬間に合わなくてほぼ聴いてないみたいな人、結構居るだろゞ(`') )

 

自分はどうしてもこの音が気に入ってしまったので、イヤピは死ぬほどサーチして今はNobunaga labsのダブルフランジに落ちついています。遮音性も電車で使えるレベルにはなりました。

 

というわけで、ついに見つけた究極はこの環境です!

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目立つから外で聴くときは気を使います(--)

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X7mkⅡ バランス端子に接続

 

現在の環境

・DM200H + X7mkⅡAM3B 3.5mmシングルエンド端子

・LYRAⅡ + Day for Night + X7mkⅡAM3B 4.4mmラインアウト端子

・ANDROMEDA + 純正Litz wire earphone cable+ X7mkⅡAM3B 4.4mmラインアウト端子

・RE2000 + オーグライン+a&+pt8芯ハイブリッド +  X7mkⅡAM3B 4.4mmラインアウト端子

 

正直、自分にとっての理想の音は堀尽くしたと思っています、、。

 

ここまで堀りつくすと、もうイヤホンについては何を聴いても驚くことは無いように思います。

 

 

【レビュー】ワイヤレスヘッドホン B&W P7Wireless

久々の大物購入になりました。
諸事情あってBluetooth搭載機器が欲しくなったのですが、ワイヤレスイヤホンは以前SONYのWI-1000Xを使っていたので今度はヘッドホンを買うことにしました。音質、使い勝手共に良さげなものを調べた結果、コレとBeatsのStudio3が候補になりましたが、オンイヤーとオーバーイヤーであれば後者の方が僕は好きなので、P7Wirelessを購入しました。

 

1.商品仕様

 P7Wireless はBowers & Wilkins(以下、B&W)の人気ヘッドホン P7 をワイヤレス化したもので、2016年に発売されました。B&Wのモデル内での位置付けはフラッグシップのP9に次ぐミドルクラスモデルと言ったところ。市場価格約4万円というのはノイズキャンセリング機能が付いていないワイヤレスイヤホンとしては高めですが、音質についての評価は高いメーカーのようです。


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        セット内容

  

 独特の高級感のある外箱を開けると、中にはヘッドホン本体の他に説明書、保証書、USBケーブル、3.5mmプラグケーブル、ケースが付属しています。メーカーによる保証期間は2年。生産中止になれば保証というのはどうなるかは分かりませんが、保証期間としては充実していると思います。


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ケースは質感が良く、デザインへの拘りが伺えます。


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ケースに入れたまま充電することもできる。

 

 このメーカーは何と言いますか、イギリス紳士のようなイメージがありますね笑。音質評価は高いけれど、デザインの面でとても凝っている。私個人としてはデザインよりも音を重視したいのですが、こういった拘りも面白さがあるなと思わされました。

 

装着感については、ヘッドホンの中でもかなり側圧が強めだなと感じました。スライダを全く伸ばさずに装着すると側圧で頭が痛くなるレベルです。音質面での変化は後述しますが、装着に違和感があるのであればスライダをなるべく伸ばして使用することをオススメします。重量についてはそれほど違和感はなく、外出時にも十分使えました。パッドの質感がしっかりしていて、フィットするとズレにくいのも好印象です。

 

 

2.音質

 レビュー環境:X7mkⅡ AM3B+付属ケーブル

 お次は気になる音の確認。箱出し一番をX7mkⅡに接続して聴いてみると、すごくフラットなリスニングモデルという印象を受けました。しかし低音が変にボワついて他音域に干渉してしまっているのが引っ掛かり、箱出しだから仕方ないかとバーンイン後に期待することに。

 その後、ピンクノイズを20時間程浴びせてからX7mkⅡの有線、Bluetoothで再度聴いてみました。低音のボワつきは一聴して分かるほどに改善しており、フラットに思えたバランスは低音比重の弱ピラミッド型に変化しました。低音比重とはいえ高音が弱いという訳ではなく、どの音域も迫力負けすることなく派手目に鳴ってくれます。またボーカル抜けが抜群に良くなっており、男声女声問わず他楽器との距離感が絶妙で何でも鳴らせそうなイメージを受けました。自分の場合、オーディオ機器を試聴して一番最初に考えるのは「これ何でも聴けるやつだな」とか、「これは女性ボーカル向けだな」等と言った音源適正の部分なので、所謂「何でも100点取ってくれる系」のP7Wirelessは非常に好印象です。

 良い部分があるかと思えば粗もありました。箱出しより改善したとはいえ、低音の質感は良いとは言い難いです。中~高音の抜けは良いのですが低音だけは抜け感が悪く、そのお陰で音場感が悪くなってしまっています。最も、密閉ヘッドホンの構造上の問題もありますので、低音の質感というのは難しい問題なのかも知れません。

 全体的な音色としてはかなりウォームで、分離感よりも調和をしっかりしてエレガントに鳴らすタイプかなーと。以前から寝ホンとして愛用している城下工業の SW-HP10S と比較すると、迫力が増してリスニングモデルとしての特徴が全面に押し出されている気がします。逆に分離感は SW-HP10S が非常に優秀に思えたので、上のクラスのモデルと聴き比べた事で SW-HP10S の性能の良さが際立ちましたね笑。

 

 次にBluetooth接続して聴きましたが、有線と比較するとやはり有線の方がいい印象を受けました。全体的なチューニングに変化はないのですが、有線の方が情報量がしっかり整理されている感じで、無線だと細やかさの部分がかなり見劣りして聴こえます。また低音の沈み方がかっちりした感じもあり、こちらは特に悪印象ではありませんでした。

 余談ながら、Bluetoothでペアリングする際に、ボタンをスライドさせた後に押下しないといけない仕様が分かりにくかったので結構戸惑いました。

 

パッドの装着感を変化させた際の音質変化については、私個人としてはスライダを最大まで伸ばした状態が最も好みでした。

スライダを縮めれば縮める程、パッドの側圧が強くなり、同時に低音が強まるイメージです。強まると言っても、この場合は低音が他の音域を潰すような質感になってしまい全体の解像感も悪くなるのであまりいい印象は受けませんでした。イヤホンに例えるならIE80Sを聴いている感覚です。(愛用している方はすみません!)

逆にスライダを伸ばしてパッドの側圧を緩めると、低音の抜けが良くなり全体の情報量も増したように聴こえます。こちらはイヤホンに例えるならLYRAⅡのチューニングに近いなと感じました。どちらが良いのかはジャンルによると言われるとそうなのですが、私としては断然後者でしたね。

 

 

 

 

3.まとめ

 デザインやガワの類いについては概ね満足でした。男女両方にオススメできる、プレゼント等にも向いてる商品ですね🎼。

 ただ、客観目線で補足するなら、音場感は密閉式ヘッドホンの常識に留まる範囲のものです。純粋な広さスケールで言うなら、イヤホンのRE2000の方が異次元性を感じましたね。(比較対象がおかしいですが) ハイエンドイヤホンと比較しても定位もそこまで良いとは感じませんでしたので、あくまで価格相応、尚且つ同価格帯の中では候補にできるかな~といったくらいの印象。いずれにせよ自分のようなマニアが集めるモデルのうちの1つとしては、賛否が分かれるように思いました。特定の音域を強調して迫力を増すよりは、調和を重視して音楽性を高め、どんな音源でも聴きやすくする。そういったモデルが欲しいかたにはオススメできるなと、感じましたね。

 

イヤホンをそこそこ極めたと思ったら、今度はヘッドホンに....もう、沼の底が見えたと思ったらまた新しい穴を見つけて、と散々です。汗 オーオタほど金と縁がない種族は居ないのではないかと思っておりますw。 散財しすぎだし、良いケーブル作りたいなぁ~。